「レッド・データ・ガール」
荻原規子/


うまいなあ、と思うのです。
荻原さんの描く思春期の子たちが。
そういえばこれも「西の善き魔女」と同じく、
学生たちのおはなしです。

荻原さんが描き出したいのが
「大人になっていく、子どもたちの成長」ゆえに、
結果としてこのジャンルのストーリーになるのだろうな、と思いました。
いわゆる「学園モノ」に抵抗のあるかたもいるだろうなと思いますが、
私は、このかたのは、好きだなあ。

保護される幼い存在だと思っていた子どもたちが、
よろこびとかなしみを合わせ持つ決断とともに
ひとつの試練を乗り越えて飛び出して行く巣立ちの姿は、
何度もみたい、美しいものだと思います。
蝉の脱皮と初飛翔のような、この瞬間だけの、一瞬の強いきらめき。


そして、恥ずかしがりとか、優柔不断とか、
ぶっきらぼうとか、一般に「いい」と評価されない性格に
根拠のある願いや、深い意味が込められているとして
光を当てる話のはこびは、ほっとします。

肯定することから、その意味が見える。
これは、とても大事だと思うのです。


あと、神霊のみなさんの性格がおもしろい。
強い力と自我を持ち、自信に満ちて、
わがままで、気まぐれ。
……なんかそういう性格に心当たりがあるな、と思ったら
ああ、「頑固な職人さん」でした。

確かに、長い年月を生きてきた
「魂で生きるエキスパート」なわけだし、
ある意味、職人さんのような存在。

あと、「スレイヤーズ」(神坂一/富士見ファンタジア文庫)の
魔族っぽいな、とも思いました。
肉体がなく、自意識を拠り所とする存在は、
「嘘」がつけないのですよね。

そう気付くと、神霊たちのひとことひとこと、
ひとつひとつの行動が、とてもヒントに満ちていて
読みすすめるのが楽しくなります。

現在、5巻まで読んで、6巻完結。

6巻の文庫落ちまで、
主人公が何を選び、そして彼女をとりまく神霊のみなさんと
ともだちたちがどう対応していくのか、
楽しみに待っています。

ストーリーの必然ではなく、
泉水子、深行というふたりのメインキャラクターの性格の必然として、
どんな結末でもそれはグッドエンドになると思えるので、
ほんと、完結が楽しみなのです。

20130404


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