「アルケミスト」
パウロ・コエーリョ/角川文庫


「『羊たちは、僕に慣れて、僕の時間割りを知ってしまったみたいだ』と彼はつぶやいた。ちょっと考えてから、それは逆かもしれないと気がついた。自分が羊たちに時間割りに、慣れたのかもしれなかった。」(p.8)

「『あなたは字が読めるのに、どうして羊飼いをやっているの?』少年は彼女の質問に答えるのをさけて、口の中でぶつぶつ言った。彼女には決して理解できないような気がしたからだ。」(p.10)

「しかし、彼は小さいときから、もっと広い世界を知りたいと思っていた。そのことの方が、神を知ったり、人間の原罪を知ることより、彼にとっては重要だった。」(p.13)
「父親は少年を祝福した。少年は、父親の目の中に、自分も世界を旅したいという望みがあるのを見た。それは、何十年もの間、飲み水と食べる物と、毎晩眠るための一軒の家を確保するために深くしまい込まれていたものの、今もまだ捨て切れていない望みだった。」(p.14)

「彼は一枚の上着と、他の本と交換できる一冊の本、そして羊の群を持っていた。しかし、最も大切なことは、少年が日々、自分の夢を生きることができることだった。」(p.15)

「少年は太陽の位置をもう一度確かめてから、夢が実現する可能性があるからこそ、人生はおもしろいのだ、と思った。」(p.16)

「『あの男も、子供の時は、旅をしたがっていた。しかし、まずパン屋の店を買い、お金をためることにした。そして、年をとったら、アフリカに行って一ヶ月過ごすつもりだ。人は、自分の夢見ていることをいつでも実行できることに、あの男は気がついていないのだよ』
『羊飼いになればよかったのに』と少年は言った。
『そう、彼はそのことも考えたよ』と老人が言った。『しかし、パン屋の方が羊飼いより、立派な仕事だと思ったのさ。パン屋は自分の家が持てる。しかし、羊飼いは外で寝なくてはならないからね。親たちは娘を羊飼いに嫁にやるより、パン屋にやりたがるものさ』」(p.30)

「『人は、人生の早い時期に、生まれてきた理由を知るのだよ』と老人がある種の皮肉をこめていった。『おそらく、人がこんなにも早い時期にそれをあきらめるのは、そのせいだろう。しかし、それはそうなるべくしてなっているのさ』」(p.31)

「少年は、風の自由さをうらやましく思った。そして自分も同じ自由を手に入れることができるはずだと思った。自分をしばっているのは自分だけだった。羊たちも、商人の娘も、アンダルシアの平原も、彼の運命への道すじにあるステップに過ぎなかった。」(p.36)

「その世界で一番賢い男は言った。『幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ』」(p.40)

「彼は、自分のことを、泥棒に会ったあわれな犠牲者と考えるか、宝物を探し求める冒険家と考えるか、そのどちらかを選ばなくてはならないことに気がついた。
『僕は宝物を探している冒険家なんだ』と彼は自分に言った。」(p.51〜52)

「誰もが同じ方法で夢を実現できるとは限らないのだ。」(p.66)

「アンダルシアの丘はここから二時間しか離れていなかった。しかし、ピラミッドと彼の間には、砂漠全体が横たわっていた。でもこの状況を別の視点から見ることもできると少年は感じた。彼は実際、二時間だけ宝物の近くにいるのだ…その二時間が実際は一年になってしまったという事実は、問題ではなかった。」(p.77)

「彼は急にとても幸せを感じた。彼はいつでも戻って、羊飼いになることができた。また、いつでもクリスタルの商人になることもできた。きっと世界には他にも隠された宝物があるだろう。しかし、彼には夢があった。その上、王様と出会っていた。これは誰にでも起こる事ではない!」(p.77)(p.40似)

「決心するということは、単に始まりにすぎないということだった。」(p.81)

「『人は、自分の必要と希望を満たす能力さえあれば、未知を恐れることはない、ということです。』」(p.90)

「『人は誰でも、その人その人の学び方がある。』と彼は独り言を言った。『彼のやり方は僕と同じではなく、僕のやり方は彼と同じではない。でも僕たちは二人とも、自分の運命を探求しているのだ。だからそのことで僕は彼を尊敬している。」(p.99〜100)

「『なぜなら、過去にも未来にも生きていないからです。私は今だけにしか興味を持っていません。もし常に今に心を集中していれば、幸せになれます。』『人生は私たちにとってパーティであり、お祭りでもあります。なぜなら、人生は、今私たちが生きているこの瞬間だからです。』」(p.101)

「彼は過去の教訓と未来の夢と共に今に生きたいと思った。」(p.102)

「彼は少しも後悔していなかった。明日死ぬことになったとしても、それは海峡を渡り、クリスタルの店で働き、砂漠の静寂とファティマの目を知った後だった。彼はずっと前に家を出てから毎日を精いっぱいに生きてきた。たとえ明日死ぬことになったとしても、他の羊飼いよりずっと多くのものを見てきたし、それを誇りに思っていた。」(p.128〜129)

「『三年目にも、前兆はおまえの宝物や運命について、語り続けるだろう。おまえは夜ごとにオアシスを歩きまわり、ファティマは、自分がおまえの探求のじゃまをしたと思って、不幸になる。しかしおまえは彼女を愛し、彼女はおまえの愛にこたえる。おまえは、ここにいてくれと彼女が決して言わなかったことを思い出す。(略)しかし、おまえは砂漠の砂の上を歩きながら、もしかして自分は行けたかもしれない……もっとファティマへの自分の愛を信じることができたかもしれない、と何度も考えてしまう。なぜなら、おまえをオアシスに引き止めたものは、二度と帰って来ないのではないかというおまえ自身の恐れだったからだ。』」(p.141〜142)

「『彼らは自分たちの運命の宝物だけを求めていて、実際に運命を生きたいとは思っていないのだ。』」(p.149)

「『人は、自分の一番大切な夢を追求するのが怖いのです。自分はそれに値しないと感じているか、自分はそれを達成できないと感じているからです。』」(p.154)

「『僕が真剣に自分の宝物を探しているとき、毎日が輝いている。それは、一瞬一瞬が宝物を見つけるという夢の一部だと知っているからだ。本気で宝物を探している時には、僕はその途中でたくさんの物を発見した。それは、羊飼いには不可能だと思えることに挑戦する勇気がなかったならば、決して発見することができなかったものだった。』」(p.154〜155)

「何をしていようとも、この地上のすべての人は、世界の歴史の中で中心的な役割を演じている。そして、普通はそれを知らないのだ」(p.188)

「『僕は自分の運命を実現する途中で、必要なことをすべて学び、夢見たことをすべて体験した』」(p.190)


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